遷延性意識障害の妻を支えて

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zoom RSS [0130] 第24回日本意識障害学会参加(浜松)

<<   作成日時 : 2015/07/29 23:44   >>

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7月24―25日にアクトシティ浜松で開催された第24回日本意識障害学会へ参加してきました。意識障害学会へは妻が遷延性意識障害になって以来毎年勉強のため参加してきていましたが、ここ2年は遠方であったため行けなかったのですが、今回は県内での開催でしたので2日とも行くことができました。今回のメインテーマは「急性期医療から在宅医療へ」ということでした。遷延性意識障害の治療というのは医師はもちろんのこと、看護やリハビリ、ソーシャルワーカー、介護士、など多種多様な職種の方が関わっていて、そして患者家族の頑張りが一緒になってはじめて前に進めるものだと思います。したがって小さな専門学会なのですが総合学会のような幅広い演題があります。そしていつも新しい発見があります。

会場が2つあるので聞きたい演題が重なってしまうことも多かったのですが、印象に残った発表をいくつか紹介したいと思います。

まず、特別講演(SL2)では「意識障害改善のためのリハビリテーション- 和歌山 E-mov プロジェクト -」と題して和歌山県立医科大学からの講演がありました。急性期からの早期リハビリテーションに取り組み、手術のその日から(場合によっては手術前から)早期にリハビリを始めて、それも色々なチューブがついた状態でも患者を立たせたり、点滴をつけたまま廊下を一周歩いたりとこれまでの常識では考えられない早期リハビリに取り組んで成果を上げているとのことでした。意識障害の患者の場合はベッド上でのもみもみリハビリはほとんど効果はなく、ギャッチアップしただけでは覚醒は見られない、端座位で座らせる(90度座位)ことは効果的で、さらに立位はより効果が増す、歩かせるとさらに良いとのことでした。従来の考え方は脳血管障害のリハビリは術後2週間は安静というのが常識だったそうですが、最新の研究では術24時間以内にリハビリを始めた方が予後が良いことがわかっています。リハビリは“廃用予防”ではなく“治療”である、安静は“麻薬”であるという言葉が印象に残りました。

ランチョンセミナー(LS2)では新世代の抗てんかん薬レベチラセタム(イーケプラ)の紹介がありました。抗てんかん薬は従来型の薬から新世代の薬へと世代交代が進んでおり、ちょうど妻の薬も従来型のバルプロ酸Na、クロナゼパム(リボトリール)から新世代のレベチラセタム(イーケプラ)、ラモトリギン(ラミクタール)に切り替えている最中なので、興味深く聞きました。新世代の薬は痙攣の再発がなく、傾眠や肝障害の副作用もないので使用が増えているとのことでした。今後はファーストチョイスになりうる薬のようです。

特別シンポジウム「急性期医療から在宅医療へ」は今回のメインテーマのシンポジウムでした。特に第1題の仙台往診クリニック・川島孝一郎先生の講演「意識障害生活者のあり方・生き方(国際生活機能分類とアドバンス・ライフ・プランニング)」には大変感銘を受けました。川島先生のクリニックは往診専門のクリニックで、遷延性意識障害者が生きる道の一つの選択肢として在宅療養があるという観点でお話をされました。遷延性意識障害の医療は終末期医療と混同され、生きていることは辛いことだと思われたり、またそんなにしてまで生きるよりは尊厳死を選ぶということが推奨されたり、我々のような遷延性意識障害の家族を持つものからすると理解しがたいことが世の中では考えられているように思えます。先生のお話では、障害者になったら生活機能が変容し、それに合った生活をすれば良いのであり、その範囲で100%の生活をすれば良いという考え方がありました。胃瘻や呼吸器もその生きるための体の一部分であり、身体から離すことのできないものである、つまり生命維持治療と身体が統合された全体で生きている状態ということでした。川島先生の考える在宅医療は本当に素晴らしいもので、医療費の削減だけで病院から在宅への移行を推奨する国の施策とは全く違うと感じました。

特別企画「意識障害に対するニューロモジュレーション」では藤田保健衛生大学病院から最新のDCS治療の成果について発表がありました。これまでは若年(35歳以下)の頭部外傷での成績が良く、35歳以上で低酸素脳症は有効例が少ないという認識でしたが、最近の症例の統計を取ってみると必ずしも当てはまらないケースもあって、年齢が高い場合や低酸素脳症でも著効例が出てきているということでした。結局、今の時点では手術前にどのケースに効くのかわからないと言うことでした。脳はまだまだわからないことが多いようです。

一般演題では家族からの発表も例年より多かったように思いました。患者家族が専門家に混じって、家族ケアの効果を発表され、医療だけでは十分ではない遷延性意識障害者の治療には家族の取り組みが重要であることがあらためて感じられました。

2日目の午前のセッションでは特別シンポジウム「遷延性意識障害患者の現状と対策」ということで、静岡県の遷延性意識障害患者の調査と家族会のアンケート調査の報告がありました。浜松医科大による患者調査は病院と老健などの施設が対象であったため高齢者に偏った患者像となっていました。我々家族会ではむしろ若年者の方が多く、6割は在宅になっているので実態とはかけ離れた調査結果で違和感がありました。遷延性意識障害=高齢者の終末期医療ととらえられ間違った解釈になってしまうことが危惧されました。静岡県による調査では結局市や町では遷延性意識障害者という基準で介護サービスの利用者をピックアップすることができないため、静岡市や浜松市では遷延性意識障害の数はゼロという大変お粗末な結果でした。遷延性意識障害者の実態調査の難しさをあらためて感じました。家族会からはアンケート調査結果による大変困難な現状について報告がありました。

今回は初めての試みとして、家族医療相談会が行われました。2日目のお昼からうなぎ弁当を食べながら遷延性意識障害に関するエキスパートの先生方が家族からの質問に答えてくださいました。個別相談ではなく、一人ずつ質問して複数の先生方から回答を得るシンポジウム形式でしたので、質問できる人の数は限られていましたが、それでも3時間近く相談会にお時間をとってくださったので、家族会としては本当にありがたいイベントとなりました。現状、決定的な治療法がない中で、家族が遷延性意識障害者となったら病院からはもう治療はありません、退院してください、リハビリはできません、、、と家族より先に医療に諦められてしまうということを我々は経験してきています。そんな中で、医療者としてこの困難な課題に取り組んで下さっている学会の先生方は本当に神様のような存在に見えます。今後も続けて欲しいと思いました。

学会への参加は家族会を支援してくださっている諸先生方にお会いして話ができる貴重な機会であるとともに、家族会の知り合いの方とも久しぶりに会って話をすることができて有意義な時間になります。ただ、最近は初期のころからいつも一緒に参加していた方々がなかなか来られなくなってしまっていて、介護者の高齢化という家族会の抱える問題を身に染みて感じます。会場が2つに分かれて同時進行なので、特に一般演題は残念ながら聴けなかった発表も多くありました。集中して聴いたつもりですが、日ごろの介護疲れのためか、部屋が暗くなると睡魔に襲われてしまって記憶のない時間もありました(これは遷延性意識障害とは違います)。

来年は香川県の高松、再来年は富山での開催と言うことでしたが、また遠方になるので行けそうにありませんが、遷延性意識障害者治療の研究が進んでいつの日か全ての患者が意思疎通できるようになる日が来ることを願っています。
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抄録はこちらからダウンロードできます。
http://jcs2015.umin.ne.jp/

うなぎ弁当が出ました!
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
学会お疲れさまでした。
そして、お会いでき感謝の気持ちをお伝えできたことを嬉しく思いました。
息子が在宅にスムーズに移行できたのも、貴ブログの存在は大きく本当にありがたかったです。
できればもう少しお話をお伺いしたかったですが、ほとんど休みなしのプログラムなので、仕方ないですね。
初めての学会参加でしたが、発見があり希望があり、励まされる本当に良い学会ですね!
周りの方々にもお伝えしながらも、介護やリハに活かしていきたいと思います。


まさ
2015/08/04 21:18
まさ様
こちらこそ、声をかけていただきありがとうございました。ちょうどハートネットTVの放送があった後でしたので、当日は多くの方にTV見たよと声をかけていただき有り難かったです。
学会では有意義な時間を過ごすことができました。会報にもレポートを書きますので読んで下さい。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
福寿草
2015/08/12 23:27

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