[0036] 学会発表(第19回日本意識障害学会)

前回のブログでお知らせした通り、7月23-24日に下関で行われた第19回日本意識障害学会で発表してきました。7月22日の夕刻、初めて富士山静岡空港を利用し、福岡空港~博多~小倉経由で下関に入りました。学会の会場は「海峡メッセ下関」で、隣には30階建ての展望タワー「海峡ゆめタワー」があります。2日間ほぼ缶詰で、遷延性意識障害に対する最新の研究発表を聞いてきました。

まずは自分の発表についてですが、演題は「在宅における紙屋プログラムの実践とその効果」です。昨年5月より紙屋克子先生の看護プログラムの一部分ですが、手技を学んで在宅で継続的に妻に行って来ました。本当は意識レベルが少しでも良くなることを期待し、他にも筋緊張の緩和、尖足の改善、頚椎の保持力なども改善されることを期待しているのですが、実際に目に見えて良くなったのは、便通が良くなって下剤がいらなくなったことと痰が出なくなって吸引の必要がなくなったことです。

実際の方法を少し記述しておきます。まず、入浴して筋肉を温め緊張をほぐします。浴槽でもお湯に浸かって膝や肩、腕を曲げ伸ばししほぐします。お風呂から出たら水分補給をしながらしばし休憩です。それからメインのうつ伏せ寝(腹臥位)での用手微振動を行ないます。うつ伏せになっている時間は15分程度です。用手微振動は介護者の手のひら(手首に近い方)を使って、臀部から腰、背中、首、肩と順番に微振動(肉をゆらすように、さするのではない)のマッサージをしていきます(いわゆるマッサージではないそうです、微振動です)。臀部や腰のくぼみは便通を良くする効果があります。また肩甲骨あたりは痰を剥がす効果があります。用手微振動の後は、膝を曲げて足首をくるくるまわして尖足の改善を行ない、手首もまわして関節可動域を広げます。仕上げは電動マッサージャーで背中を中心にマッサージします(これはオリジナルです)。うつ伏せになってからは20分程度のエクササイズになります。効果については痰の吸引は全くしなくてよくなりましたし、排便状況は、それまでは3日に一度きっちりと下剤で排便コントロールしていたのが、プログラムを始めてから自然排便ができるようになり、だんだんと下剤の回数が減ってきました。このことについては排便記録を示して、データとして発表しました。紙屋プログラムのエビデンスの蓄積に一役買えたのではないかと思っています。

もう一つ重要なことは、在宅でこのプログラムを行うにあたってクリアしなければならないことがあり、そのことにも触れました。つまり、入浴の回数をできるだけ確保したいということから(訪問入浴サービスの利用ではせいぜい週1回です)、自宅にストレッチャーで入れるお風呂を作ったこと、二番目にマンパワーの問題で、プログラムの実施には3名の介護者を確保する必要がありますが、ヘルパー複数派遣の認定を受けたので二名のヘルパーさんが手伝ってくれることになり、家族とあわせて3名を確保できたこと、三番目にプログラム実施にあたっては専門家の直接指導を受けることができたことです。その結果、昨年5月下旬にプログラムを開始して以来、毎日行うことが出来ています(入浴は週3回です)。

従来は病院で受けるものでしたが、診療報酬という厚い壁があり、現在はほとんどボランティア的に一部の病院で実施されているに過ぎないこのプログラムですが、本物はもっと患者の状態の変化に合わせて様々なエクササイズを組み合わせていくものです。在宅で素人がやるにはそこまではできませんが、これまで継続してきたことをさらに発展させて続けていこうと思っています。

長くなったので、学会の他の発表の報告はまた次回にします。

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会場となった海峡メッセ下関 右後方は海峡ゆめタワー
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発表の様子
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この記事へのコメント

みい
2010年08月02日 23:15
私も学会に参加して、発表拝見させていただきました。意識障害学会は初めてだったので、ご家族の方が発表されることに驚きつつ、良いことだなと思いました。現在脳卒中リハ認定看護師になるべく勉強中です。奥様のような遷延性意識障害の方を良くできるよう、またそうならないように看護できるよう、努力していきたいと思います。紙屋プログラムで意識回復への効果が現れることをお祈りしております。
2010年08月03日 22:34
みい様
コメントありがとうございます。発表聞いていただけたそうで嬉しいやら恥ずかしいやら。今回の発表は自己満足の部分が大きいですが、医療職の方からも参考になったと言ってもらえたりして励みになりました。みいさんは専門性の高い看護師を目指しているとのことで、現場は大変なことも多いと思いますが頑張ってください。私も今更ながら医療職につけたらなと思ったりもします。急性期の医療は回復する確率も高く、大変重要だと思います。一方で、慢性期や在宅になった患者はわれわれはもう手遅れなのかと感じたりします。人間の回復力は想像を遥かに超えるものを持っています。それを引き出してあげることができるよう医療職、介護職、家族が力をあわせていくことが必要ですね。また来年も発表できるように頑張りますので応援よろしくお願いします。

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