遷延性意識障害の妻を支えて

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zoom RSS [0132] 食べられる口をつくる 戸原先生講演会から

<<   作成日時 : 2015/10/24 21:44   >>

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家族会「わかば」の秋の学習会は東京医科歯科大・戸原玄先生の「摂食・嚥下障害の評価と訓練の実施」というタイトルで、遷延性意識障害者介護家族にとっては最も関心の高いお話でした。特に、遷延性意識障害で起こりやすい口腔内症状をなぜそうなるのかも含めて理論的に教えていただき、妻に当てはまることも多くまさに目から鱗でした。

重い脳の障害で身体はあらゆるところが麻痺します。口腔や顔の筋肉も自由に動かすことができなくなります。麻痺と言っても弛緩するわけではなくて、むしろ筋が過緊張になります。特に本能的に気道確保しようとするために僧帽筋の過緊張によって首が反って口は開きます。遷延性意識障害によくあることですが、この口が開きっぱなしという状態が口腔機能には大変良くないそうです。正常な状態では舌が前歯の裏に当たっていることで歯を正常な位置にとどめていられるのですが、口が開いていると、あるいは首が反った状態や長期間の仰臥位が続くと舌は後退し歯から離れます。支えを失った前歯(下の)は内側に倒れこんでいってしまうそうです。同時に下あごは後ろへ後退していき、かみ合わせが悪くなって開咬という状態になります。下あごの後退で舌の居場所が狭まって舌はさらに後ろへ下がってくる、また筋緊張から舌も固くなって経口摂取のできない口腔になってしまうとのことでした。更に症状が進むと舌根沈下による気道閉塞で睡眠時無呼吸症状となって最悪の場合は気管切開、人工呼吸が必要になってくるケースがあるとのことでした。口が開いていることが発端となって咀嚼嚥下機能が低下するだけでなく呼吸機能にもかかわってくるということは知りませんでした。恐ろしいことです。

先生が話された遷延性意識障害でみられるこのような口腔の障害は妻にも心当たりのあることが多くありました。妻も初期の頃は筋緊張が高いと首が反って、口もいつも大きく開けていました。もうずいぶん前のことですが、紙屋先生にも指摘されて、妻の下あごの後退と下の歯の内側への倒れこみがあることは認識していました。また、最近まで夜中に呼吸の止まる睡眠時無呼吸となることもあって、ある時期は息が苦しいのか急に目を覚まして過呼吸のような症状になることもありましたが、すべて先生の話されたことに当てはまります。戸原先生はこういった患者の治療では歯の矯正を行って、食べられる口を作って行くとのことでしたが、お話を聞いた限りではあなり高度な技術と経験を要するようでした。また、簡易的には枕を高くしておくとある程度は防げるとのことでした。

戸原先生の講演を聞いてきて、あらためて妻の口の状態を観察してみました。ちょうど6年前に撮った写真があったので現在と比べてみました(左が2009年7月、右は現在(2015年10月))。
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これで見ると明らかに左の以前の方は下の前歯が内側へ倒れているし、下あごの後退も大きいように見えます。そして右側の現在の写真では、予想外に改善してきているように見えます。6年の間でいつから改善したのかはわかりませんが、ここ何年かは常時枕を高くしていたことも良かったと思うし、6年前の頃は毎日腹臥位を頑張っていたので(現在は逆流性食道炎で休止中)それも良かったのかも知れません。また身体の過緊張もかなりおさまってきています。久しぶりに妻の顔を見た人から表情が良くなったと言われることがあって、毎日見ている自分にはよく分からなかったのですが、この顎や歯の状態の改善がそのように見えていたのかもしれません。とにかく戸原先生の講演を聴いて発見がありました。

高枕療法について検証してみました。
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枕の高さの違いで口腔の様子を比べてみましたが、左は枕を高くした状態で、口元を拡大すると、ちょっと分かりづらいですが舌先がちゃんと舌の前歯の裏についているのがわかると思います。一方、右側は枕の低い状態で、口元を拡大すると舌が後退して歯から離れています。この状態が続くとだんだんと歯が内側へ倒れてきて、下顎の後退や舌根沈下となり、呼吸状態も悪くなるということが写真で比べると良くわかります。実は枕を高くするのは睡眠時無呼吸の時に試行錯誤して、枕を高くすると呼吸が楽になることが経験的にわかって実践していました。今では常時高い枕を使用して無呼吸になることはなくなっています。歯や顎の位置の調節にも効果があったと思います。毎日のちょっとずつの積み重ねが長い目で見ると回復への道になっているのだと気づきました。

車椅子に乗っている時も、以前の車椅子はヘッドレストが固定式で、首が後ろへ反り気味になっていたようで、夕食後などに車椅子で休んでいると呼吸が(吸う時に)ゴーと音を立てることがありました。これも車いすをヘッドレストが自由に調整できるタイプに買い替えて、できるだけ首の位置が前になるように調節しておくと異常な呼吸音がしなくなったということを経験しています。
ヘッドレストが自在に調節できる松永のマイチルト・コンパクト-3D
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他にも「開咬」=顎を閉じても上の歯と下の歯の間にすき間ができる、や「歯ぎしり」=上下の歯のかみ合わせが悪くなると上下の歯の咬む面が合うように本能的にギリギリするそうです、「下あごが後退するので上の歯で下唇を噛んでしまう」という症状も妻にも当てはまることでした。どうしてそうなるのかも先生のお話でよく分かりました。
顎を閉じた状態。前歯に少しすき間があります。でも以前よりは改善しているかも知れません。
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あくびの後などに上の歯で下唇を噛んでしまうことがあります。
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やっぱり下あごの後退、下の前歯の倒れ込みは改善しています。
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本当は意識障害者の歯の矯正をしてくれる歯科医が近くにいるといいのですが、専門的な技術と経験が必要なのでまだ治療のできる歯科医は少ないようです。口腔の状態が良くなれば嚥下の訓練も良くなってくると思われますが、まずはそのスタート地点に立たなければという思いです。以前に差し歯が抜けた時に歯科医が訪問治療に来てくれましたが、抜けた歯も入れられないとのことでした。

嚥下訓練に訪問STは毎週来てくれているのですが、その日の状態で良かったりダメだったりで、維持が精いっぱいというところです。まずは食べられる口を作ることが大切だと感じました。摂食嚥下の領域で歯科医の役割が今後ますます重要になってくると思います。

いつかは口から食べられるようになってくれたら良いなと思っていますが、今回の講演会では理論的なことが良くわかって大変有意義なものでした。

戸原先生の研究班が作成された摂食嚥下に携わる全国の医療機関等を検索できる「摂食嚥下関連医療資源マップ」です。うちに訪問STに来てくれているクリニックも載っていました。摂食嚥下の医療機関をお探しの方は検索してみて下さい。
http://www.swallowing.link/

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
福寿草様
詳細な情報のご紹介ありがとうございます。
うちの妻も下の前歯が内側に倒れ込む現象が起こっています。これを矯正するのも仕事ですが、今のところ手が回っていません。
それでも、最近は毎朝の咀嚼訓練で、焼き鳥・つくね・もつカレー・ウナギの蒲焼きなど本人が好んでいた食材で噛み応えがあるものをガーゼでくるんで使っています。すると、味覚に反応して健常時代に普通に食事していたときと同じような口の動かし方で噛んで唾液を嚥下しており、一歩前進したかな?と思っています。

車椅子の新調にむけて作業中です。今は一台しか有りませんので、故障してしまうと生活が滞ってしまう懸念があります。現行機はマツナガのマイチルトコンパクトで、次もマイチルトコンパクト3Dにしようと思っています。
新車が来たら、現行機を整備して予備機にしておこうと思っています。それにしても、高頻度で5年使うとあちこちガタが来ますね。要修理箇所が全体にあり、まさに満身創痍です。
Upstream
2015/10/25 08:41
さっそくマップのことも書き込んでいただいてありがとうございます。
少なくともこれ以上内側に倒れないために唇で内側におせないようにマウスピースつくってもよいかなと思いますし、ほかの方でもあったのが7,8年舌の訓練続けて舌の動きがよくなってきたら下の前歯を舌で前に押すようになってきて傾斜が治った方いらっしゃいます。唇の力をかからないようにして、舌の力がかかるようにするというのがポイントだと思います!
戸原
2015/10/27 04:22
高枕療法のご紹介ありがとうございます。
さっそく、病院へ話して、とりいれられるか検討してみたいと思います。

弟(気管切開)も、口はほとんど開きっぱなしです。
やはり、下の前歯が内側に後退しているように思います。
端座位、腹臥位の時に咽て、下唇や時には舌の先を噛んでしまいます。
で、病院出入りの歯科医に、歯のガードを作って貰っています。戸原先生のおっしゃるマウスピースのようなのかは、まだわかりませんが。

http://fumin1.at.webry.info/
ふーみんの姉
2015/10/27 07:37
福寿草様
いつもいつも有難うございます。
病院で、いつも頭が低いと苦しそうなのでバスタオルなどで高くしてやるとホッとした顔になるなぁと経験的に思っておりました。気管切開のカニューレが中でこすれるから仰向けの首の状態になるのが苦しいのかなと思っておりました。
教えてくださって有難うございます。
うちの場合は舌の勝手なベロベロや歯のカチカチがあるため、皆様とは少し違うのかもしれませんが、口が開きっぱなしであることは変わりなく、下の前歯はガチャガチャした歯並びになって来ました。
家族の歯磨きは禁止されていたので、入院1年後に見たら親不知は真っ黒けの虫歯で抜くしかない状態、小さい虫歯がたくさんできていて、病院内の歯科に診て頂いたのですが、寝たきりのためレントゲンが撮れないから治療できないとのこと。痛くない間は放置してくださいと言われました。カチカチされて手を噛まれたくないと言われました。(虫歯は1本もない人でした)
病院側も虫歯が出来てようやく、家族の歯磨きを許してくれました。いつも汚い歯をしていて歯磨きナップで拭くだけだったので、良かったです。口の中に塗りたくられる乾燥防止剤や、唇にベトベトに塗られるアズノールも不快で嫌なようです。今も塗っていいのかどうか迷います。上下ともにマウスピースをはめっぱなしで、苦しそうで、嚥下障害がさらに進むような気持ちもあり、舌を噛んでしまうのも怖いのでいつも何か板挟みの心境です。
ひとりぼっち
2015/10/27 10:18
Upstream様
咀嚼する運動そのものも歯や顎の状態を良くする効果があるようです。動かさないことが一番良くなくて、廃用になるのだと思います。
車椅子は6年に一度補助が出るので、だいたい耐久年数はそんなものなのでしょうか。確かに予備が一台あると安心ですね。うちでも旧型を玄関に飾って?います。
福寿草
2015/10/27 22:13
戸原先生
キャー、戸原先生から直々にコメントいただいて感激です。(正しく理解しているかどうかわかりませんが)講演は大変参考になりました。後半話された矯正の話も興味深かったのですが、またでひパート2をお願いします。
舌の位置とあと唇の力加減ですね。注意しておきます。昔、唇を噛まないように上の歯用のマウスピースを作ってもらったことがあります。唇が治って使わなくなって、久しぶりにはめてみたら(歯が動いて?)はまらなくなりました。歯って簡単に動くんですね。
今度は経口摂取の報告ができるように頑張りたいと思います。
福寿草
2015/10/27 22:20
ふーみんの姉様
前歯の倒れ込みは共通して起こる現象のようです。うちのも思いがけず改善したので、姿勢やちょっとしたことで進行を抑えることはできそうです。高枕はギャッチアップと組み合わせると自然な首の位置になりますので、本人も呼吸が楽になると思います。あと、舌が柔らかいときは調子が良いバロメーターです。
福寿草
2015/10/27 22:26
ひとりぼっち様
安全のためとは言え、確かに上下マウスピースをはめっぱなしは窮屈そうですね。一時的な矯正と考えて、状態が良くなれば外せるようになると良いですね。僕は枕の高さは重要だと感じています。もちろん首が反る緊張が強いときはどうにもならないのですが、、、
福寿草
2015/10/27 22:29

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